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マルコフ行列の中の著者達: どの著者がもっとも人々に影響を与えたのか? (19)

前回,時間の経過に共なって,人口の分布が一定の値に近づくことを見た.最後に考えた問題は,この結果が最初の人口の分布によって変化するかどうかであった.つまりこれはmatrix の性質なのか,matrix と初期状態の両方を合わせた性質なのだろうか.

  • 仮説3 初期条件によって将来は変化して一概には決まらない.例えば,ここまでの例では Berlin に最初 900 人,Potsdam に 100 人いたが,Berlin に最初 0 人,Potsdam に 1000 人いた場合には違った結果になるだろう.

これも計算してみよう.Berlin には最初誰もおらず,1000人全員が Potsdam にいるとしよう.

octave:10> p = [0 1000]';
octave:11> M * p
   300
   700
octave:12> M^2 * p
   450.00
   550.00
octave:13> M^3 * p
   525.00
   475.00
octave:14> M^10 * p
   599.41
   400.59
octave:15> M^100 * p
   600.00
   400.00

なんと,初期条件を変えても結果は同じになってしまった.様々な人数の初期状態でどのように人口が推移するかを示したのが図 12 である.何かのパターンが見える.そしてパターンを考えるのが数学である.
Figure 12: Population history with various initial conditions.
ところで,この Berlin 600 人,Potsdam 400 人というのは特別な数であることに気がついただろうか.移動の人数を計算してみると,
\begin{eqnarray*} \mbox{Berlin} \rightarrow \mbox{Potsdam} &=& 600 * 0.2 \\ &=& 120 \\ \mbox{Potsdam} \rightarrow \mbox{Berlin} &=& 400 * 0.3\\ &=& 120 \end{eqnarray*}
なんとこの人数になった時点で移動量が同じになり,結果として人口は変化しない.こうしてみてみると,最初に与えられた人口ベクトルに依存しない何かがあるということが見えてくるのではないだろうか.つまり,Matrix の中に何かあるということが感じられるのではないだろうか.数学ではまず,対象となる数について考えてきた.そしてその数をどう操作するかということが主な関心であった.ところが,ある時点で数ではなく,その操作を考えるようになる.数学が数について考えなくなるのである.

次回はこの「数学が数について考えなくなる」ことについてちょっと話をしてみたい.

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