Skip to main content

Posts

Showing posts from March, 2013

Hasenschule: A girl who invented a matrix.

行列を発明してしまった子 C は教えていてとても面白い子である.6ヶ月前にはいつも泣いていた一桁の足し算に苦労していた子である.しかし今は3桁の引き算もこなす. 今回,彼女が解いていた問題を図 1 に示す. Figure 1. The question. 私はこの答えが次の図 2のようなものだったらとてもうれしいと考えた. Figure 2. Expected answer 私が他の子を見ている間,彼女はどうやら集中して計算しているようだ.私はどうやっているのかと彼女の机に近付いて見たものは,なんということだ,行列だ!(図3). Figure 3. A matrix is invented. 私は彼女に,「ちょっと待った.これは自分で考えたの?」と聞いたら.「もちろん,どこか計算を間違ってる?」という答えであった. 私には計算はどうでもよかった.彼女が自分でこのように答えを並べたことに驚いたのである.問題の2つの数字の組はどちらも横に並べてあったものである.片方を縦にしてそして,全てに適用する演算子を一つだけ左上に書き,答えを表にして並べたのである. こう書くのはとても合理的である.図4にどれだけ無駄な繰り返しが図 2にあるのかを示した.まず,各数字は3回コピーされている.'+'と '=' の記号はそれぞれ9回コピーされている. Figure 4. Unnecessary duplications 彼女の書いた図3の上図を見ると,全ては '+' なのであるから'+'は一回だけ書かれている.これもすばらしい,下図には '-' が書かれている. この図3にはコピーされている数字は一つもない.必要最小限でかつ十分な情報が書かれている.人はコピーすると間違えるものであるから,このように書く方式が長い年月を経て洗練されてきた.Excel などのスプレットシートを使う人ならば,どうしてこのように書くのかご存知であろう.そしてそれが図 2よりもずっと便利であることもご存知であろう. 彼女はどこかでこれを見たのかもしれない.たとえそうでも私は彼女がこのように書く方法を自然に思って疑問なく書いたことにとても感激した.それで私は金のシー

Hasenschule: Was bedeutet das? Bitte erklären das mir. What does it mean? Please explain me that. (3)

Case A. もう一つのケースは A 孃である.彼女は幾何を勉強していたが,たまたまそれをRechtschreibung の M 先生が教えていた.直線(Gerade)が交わる点(Schnittpunkt)はいくつあるかという問題である.図には交差点が強調されているのだが,A 孃はどうしてもわからないらしい.M 先生は私に A 孃を助けるように頼んだ. 私は毎回同様,「直線って何か説明して?(Bitte erklären mir was ist Gerade.)」と頼んだ.A 孃の答は,「直線は直線です.(Gerade ist Gerade.)」である.まあ,予想した通りではある.そこで私は尋ねた. 「学校で習った直線は終わりがありましたか?ずっと続いているとかいう話はありましたか?」「直線はずっと続いています.」なるほど.では彼女は直線と半直線と線分を習っているわけだ.次に,交差点(Schnittpunkt)というのは何かな? と尋ねると,しばらく考えた後に,知らないという答えであった.交差点というのはどういう意味か知らなければ,それに答えられるわけがない.実は私もSchnittpunkt というのが交差点という意味だとは知らなかったので,他の先生に尋ねた.さて,これで問題がわかった.そこで質問に戻ったら,何の問題もなかった.問題の図では線が途中で止まっているにもかかわらず,彼女は三本の直線の交差点が 0, 1, 2, 3 の場合を全て正しく分類した. 問題が何かわからないことは結構多い.彼女は家では英語とスペイン語を使っているらしい.問題の意味がわからないということを,自分でみつけられるようになって欲しい.と私は願っている.私はまた授業で,「この問題がどういう意味か説明してよ」と生徒さんに尋ねてまわるのである.私が問題の意味もわからないかわった数学の先生と思っている生徒さんもいるようだが,実はまったくその通りなのである. 何日か前,たまたま私の算数の授業に来たのが A 孃だけであった.彼女は他の先生に習っていたので,私は彼女の暦の計算をずっと横で見ていた.そこには,Schaltjahrという言葉があった.私は彼女に,Schaltjahr とは何かと尋ねた.それは上手く説明してもらえた.そこで次になぜ,Schaltjahr と言うのか,いっ

Hasenschule: Was bedeutet das? Bitte erklären das mir. What does it mean? Please explain me that. (2)

Case S S 嬢はかけ算の問題を解いていた.黒パン一つが 2.9 ユーロなら,次の数量2,4, 6, 8 ではいくらでしょうか? という問題である.図 1 がその問題である. Figure 1. Case S. question. 彼女は最初のAnzahl (数量) 2 に正しく 5.8 ユーロと答えた.(ドイツあるいはヨーロッパのいくつかの国では小数点にカンマを使うが,本文ではピリオドを使う.) 私は,なるほどと思ったが,次の数 4 を計算するのに,彼女は 2.9 x 5.8を計算している.そこで私はなぜそうするのか尋ねた.(図2にその跡がある.) 彼女はそうするべきだと思っているらしいが,理由は彼女にもわからない.そこで私は,図 2 を書き,4つのパンを買う時には,4 x 2.9 を計算するように説明した. Figure 2. How to calculate the price? 彼女が最初にやったのは,私の図を修正することである.彼女はパンに影をつけ,よりリアルなパンを描いた. しかし次の問題,数量 6 でまたわからないという.私は不思議に思った.彼女はかけ算の概念をわかっていないのだろうか? 私は質問を普通の文で書くようにとお願いした.問題を正しく表現できるかをみるためである.しかし,それもどうもわからないらしい.私は例として,図2 にあるのだが,問題の意味は,「2.9 ユーロのパンを4つ買いたい,いくら支払うのか」と意味であるとした.彼女はそれはわかるのだが,しかしそれがなぜ今の問題と結びついているのかがわからないらしい. 問題にある言葉を一つづつ尋ねていった.「黒パン」は何か知っている.2.9 ユーロも問題ない.次に私は,「数量って何? (Was ist die Anzahl?)」と尋ねた.「知らない.(Ich weiss nicht.)」という答えである.なるほど,考えてみると私も良く知らない.そこで,「多分,いくつという意味だけれども,他の先生に尋ねてみよう」と他の先生に尋ねると,私の想像は正しかった.彼女は「ああ,いくつあるかという意味なの.(Wie viel Stück)」 その後,6個,8個の問題は彼女には簡単だった.何がわからないかをみつけるのはなかなか難しい.しかし,問題はこんなところにあるこ

Hasenschule: Was bedeutet das? Bitte erklären das mir. What does it mean? Please explain me that. (1)

生徒さんが私に問題について尋ねると,私の答えはたいていこうである. ``Was bedeutet das? Bitte erklären das mir.'' 「それはどういう意味なのかな.説明してくれる?」 私は続ける. ``Mathe ist eine Sprache. Es gibt eine Bedeutung.'' 「数学は言葉の一つです.何か意味があります」 生徒さんに説明してとお願いすると,時には「生徒が教えるんじゃなくて,先生が教えるものだ」と答えることがある.なるほど.しかし私は実は説明することも学んで欲しいのである.それで,「それはどういう意味?」「それは本当なの?」「説明してよ」と尋ねるのである. 時には,「私が答えを教えてくれない」,「助けてくれない」と泣き出す生徒さんもいる.私は,「答えはそんなに重要ではないんだよ,この問題を解いてもらうのは,どうやったら学べるかを学んでもらう練習なんだ.君らにはいつか人類がこれまで直面してこなかった問題を解かねばならない時が来る.私はその時にどう考えるかを教えたい.私の助けがいらなくなるように勉強して欲しい.だから考えてみて」と思いつつ,私自身も新しい問題をどう解くのかを勉強している身なので,こう断言できるのか不安がある.そこで,「泣かなくても大丈夫,ゆっくり考えればきっとわかるよ.今日できなくても明日がある.答えが正しいかそんなに重要ではない.重要なのは理解したかどうかなんだ.」となだめている.ところでドイツ語では正しいがrichtig で重要が wichtig であり,私がこれを上手く言えないとおかしいらしい.(Richtig ist nicht so wichtig.) 5ヶ月前にはいつも泣いていた常に 5 の成績だった子が,今は成績 2 になったのがとても嬉しい.(ドイツでは日本とは逆で 1 が最高の成績で,5 が落第である.) 今回は,2つのお話を紹介する.