前回の Alice 一人の場合は自分が好きなら1,嫌いなら0,ととても簡単だった.これではあまりに簡単すぎるので,Cheshire catにも登場してもらおう.
図 9(a) にはAlice は自分は好きだが,Cheshire を好きではなく,Cheshire は自分も Alice も好きではない場合を示す.その行列は以下のようになる.ここで注意することは登場人物の数の二乗の関係が生じていることである.2人の場合は,\(2^2\),つまり 4 つの関係がある.
\begin{eqnarray*}
\begin{array}{ccc}
& \mbox{Alice} & \mbox{Cheshire}\\
\begin{array}{c}
\\
\mbox{Alice}\\
\mbox{Cheshire}\\
\end{array}
&
\left[
\begin{array}{c}
1 \\
0 \\
\end{array}
\right.
&
\left.
\begin{array}{c}
0\\
0\\
\end{array}
\right]
\end{array}
\end{eqnarray*}
図 9 (b) のグラフではCheshireは自分は嫌いかもしれないが,物語の中では Alice にはちょっとだけ優しかった気がする.だからCheshire は Alice を好きかもしれない.とりあえず Alice は Cheshireをそんなに好きではないとしよう.その場合の隣接行列は次のようになる.
\begin{eqnarray*} \begin{array}{ccc} & \mbox{Alice} & \mbox{Cheshire}\\ \begin{array}{c} \\ \mbox{Alice}\\ \mbox{Cheshire}\\ \end{array} & \left[ \begin{array}{c} 1 \\ 1 \\ \end{array} \right. & \left. \begin{array}{c} 0\\ 0\\ \end{array} \right] \end{array} \end{eqnarray*}
それぞれの関係を書いてみると以下のようになる.ここで A は Alice を C はCheshire cat を示している.A \(\rightarrow\) A は Alice が Alice を好きである.A \(\rightarrow\) C は Alice が Cheshire を好きであると読む.
\begin{eqnarray*} \begin{array}{ccc} & \mbox{Alice} & \mbox{Cheshire}\\ \begin{array}{c} \\ \mbox{Alice}\\ \mbox{Cheshire}\\ \end{array} & \left[ \begin{array}{c} \mbox{A $\rightarrow$ A} \\ \mbox{C $\rightarrow$ A} \\ \end{array} \right. & \left. \begin{array}{c} \mbox{A $\rightarrow$ C}\\ \mbox{C $\rightarrow$ C}\\ \end{array} \right] \end{array} \end{eqnarray*}
図 9 (c) のグラフは,Alice は自分を好きで,しかもCheshireも好きであり,Cheshire は自分は嫌いだけれども Alice は好きだということを示す.その隣接行列は以下になる.
\begin{eqnarray*} \begin{array}{ccc} & \mbox{Alice} & \mbox{Cheshire}\\ \begin{array}{c} \\ \mbox{Alice}\\ \mbox{Cheshire}\\ \end{array} & \left[ \begin{array}{c} 1 \\ 1 \\ \end{array} \right. & \left. \begin{array}{c} 1\\ 0\\ \end{array} \right] \end{array} \end{eqnarray*}
ここで注意して欲しいのは,互いに好きな関係では有向グラフは無向グラフになり (図 9 (d)),隣接行列は特別な形となる.このような形の行列を対称行列と呼ぶ.Alice と Cheshire の関係をひっくり返しても行列は同じ形になっている.行列でみると左上から右下への対角線に対して対称になる.
さて,二人の関係は一人よりは面白かったがまだ簡単である.次回は三人の時を考えてみよう.そこまで行けば何人の関係でも大丈夫ということが示せるだろう.
Figure 9: Graphs representing relationships between Alice and Cheshire cat. |
図 9 (b) のグラフではCheshireは自分は嫌いかもしれないが,物語の中では Alice にはちょっとだけ優しかった気がする.だからCheshire は Alice を好きかもしれない.とりあえず Alice は Cheshireをそんなに好きではないとしよう.その場合の隣接行列は次のようになる.
\begin{eqnarray*} \begin{array}{ccc} & \mbox{Alice} & \mbox{Cheshire}\\ \begin{array}{c} \\ \mbox{Alice}\\ \mbox{Cheshire}\\ \end{array} & \left[ \begin{array}{c} 1 \\ 1 \\ \end{array} \right. & \left. \begin{array}{c} 0\\ 0\\ \end{array} \right] \end{array} \end{eqnarray*}
それぞれの関係を書いてみると以下のようになる.ここで A は Alice を C はCheshire cat を示している.A \(\rightarrow\) A は Alice が Alice を好きである.A \(\rightarrow\) C は Alice が Cheshire を好きであると読む.
\begin{eqnarray*} \begin{array}{ccc} & \mbox{Alice} & \mbox{Cheshire}\\ \begin{array}{c} \\ \mbox{Alice}\\ \mbox{Cheshire}\\ \end{array} & \left[ \begin{array}{c} \mbox{A $\rightarrow$ A} \\ \mbox{C $\rightarrow$ A} \\ \end{array} \right. & \left. \begin{array}{c} \mbox{A $\rightarrow$ C}\\ \mbox{C $\rightarrow$ C}\\ \end{array} \right] \end{array} \end{eqnarray*}
図 9 (c) のグラフは,Alice は自分を好きで,しかもCheshireも好きであり,Cheshire は自分は嫌いだけれども Alice は好きだということを示す.その隣接行列は以下になる.
\begin{eqnarray*} \begin{array}{ccc} & \mbox{Alice} & \mbox{Cheshire}\\ \begin{array}{c} \\ \mbox{Alice}\\ \mbox{Cheshire}\\ \end{array} & \left[ \begin{array}{c} 1 \\ 1 \\ \end{array} \right. & \left. \begin{array}{c} 1\\ 0\\ \end{array} \right] \end{array} \end{eqnarray*}
ここで注意して欲しいのは,互いに好きな関係では有向グラフは無向グラフになり (図 9 (d)),隣接行列は特別な形となる.このような形の行列を対称行列と呼ぶ.Alice と Cheshire の関係をひっくり返しても行列は同じ形になっている.行列でみると左上から右下への対角線に対して対称になる.
さて,二人の関係は一人よりは面白かったがまだ簡単である.次回は三人の時を考えてみよう.そこまで行けば何人の関係でも大丈夫ということが示せるだろう.
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