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A pattern girl

D 嬢はちょっと騒がしい.時々自分でお話を作ってそれを大声で話している.さて問題はそれをどこでもすることである.とはいっても私はお話を作ることのできる人を尊敬しているので,あんまり静かにしなさいと言いたくない.でも他の子供が集中できないのは困る.それでなんとか問題に集中して欲しい.

先日の D 嬢は Zahlenhaus で足し算の練習をしていた.初級では足し算と引き算の関係を教えようというので,Zahlenhaus は以下のような計算がある.図 1には Zahlenhaus の例を示している.
Zahlenhaus: 7 = 4 + 3
これを見て以下の計算をする.

\begin{eqnarray*}
 4 + 3 &=&  \\
 3 + 4 &=&  \\
 7 - 3 &=&  \\
 7 - 4 &=&  \\
\end{eqnarray*}

もう一つの例は,

\begin{eqnarray*}
 1 + 6 &=&  \\
 6 + 1 &=&  \\
 7 - 1 &=&  \\
 7 - 6 &=&  \\
\end{eqnarray*}

である.つまりこれによって加算は Commutative であること,簡単に言えば足し算をひっくり返しても同じ \(1 + 6 = 6 + 1\) であることを教え,引き算ではHaus を見ることで,片方を取ってしまうともう片方が残ることを教える.後半では以下のような問題になっている.

\begin{eqnarray*}
 \begin{array}[t]{cccc}
  1 & + & 6 & = \\
  6 & + & 1 & = \\
  &   - &   & = \\
  &   - &   & = \\
 \end{array}
\end{eqnarray*}

D 嬢はこれらの計算をまったく間違えない.

私は答えがあっていることはあんまり興味がない.どう彼女が理解しているのかが面白いことである.そこで,私は尋ねる.「どうやって計算したの? (Wiehast du gerechnet?)」これが一番面白い.まずは子供達はなかなか説明できない.D 嬢は私にどうやったのか教えてくれた.問題は以下のようになっている.

\begin{eqnarray*}
 \begin{array}[t]{cccc}
  1 & + & 6 & = \\
  6 & + & 1 & = \\
  7 & - &   & = \\
  7 & - &   & = \\
 \end{array}
\end{eqnarray*}

まず,最初の答えは三段目にある(赤で示した部分).
したがって,これをコピーする.

次の答えは四段目にある(青で示した部分).それをコピーする.
同様に,以下の色の部分をコピーする.

私は言った「Ausgezeichnet! (すばらしい!)」

数学での重要なことはパターンをみつけることである.物は数えられるというパターンをみつけた時,数学が生まれた.世界の中のパターンをみつけ,それを規則化することが数学である.しかし,そのパターンは吟味され,いつ成立するのかを調べなければいけない.数学の証明でとても起こりそうない特別なケースをとりあげるのは,このパターンがいつ破綻するのかを知りたいからである.限界を知ればいつ使えるのかがわかる.

この練習問題では以下数ページはこのパターンが続く.この後は 8, 9, 10 のZahlenhaus である.彼女はまったく間違えずに,しかしまったく理解せずに全ての問題に答えられるのである.これは研究では時々見られる.何故上手くいくのかわからないが,結果として上手くいっているようだというようなものである.そういうものはあまり研究とは言えないと思うのだが,上手くいく方法があるという経験則の知識の提供という意味はあるかもしれない.

私は彼女に,全て正しい.パターンをみつけることはとてもいいことだ.と言いながら,しばらく考えた.この彼女の方法はすばらしいが,残念ながらいつか破綻する.どうやったら破綻することを納得してもらえるだろうか.

「数学は言葉の一種である.だからそれぞれの行には意味がある.君は数学を使って何かを表現できる.さて,ここにはプラスとマイナスがあるけれども,プラスはどういう意味かな?」

「プラスはたくさんになるという意味です.」

「その通り,でも 1 + 6 はどうして 7 なんだろう?」

「???」

「1 + 6 は 10 ではない.でも 10 は 1 よりも 6 よりもたくさんだ.どうして10 ではないのだろう?どうして 1 + 6 は 7 なんだろう.たくさんだったら 8でも9でも10でもいいのではないだろうか?」

「???」

私はここで Haus に戻って,1 と 6 の丸の数を数えてもらった.彼女は数は数えられるので,これが 7 になることに気がついたようであった.私はプラスは一緒になることであると説明した.一緒になると普通はたくさんになる.だからたくさんというのは正しい.でもたくさんというよりも一緒になるということの方がプラスにはあっている.

次は彼女の方法が破綻する場合を説明したい.私は 1 + 6 に意味があることを説明し,それだけでも答えがあることを説明した.したがって,4つ一組のこの練習問題ではない場合でも 1 + 6 には答えがあることに気づいてもらおうとした.その場合には場所によるコピーできないことがわかってもらえるのではないかと思ったのだ.20分はかかったと思うが,彼女はこれに気がついたのではないかと思う.

しかし,私は 8 歳の子供が,以下のことに一部であるが気がついていたことに驚いた.

\begin{eqnarray*}
 \begin{array}[t]{cccc}
  x & + & y & = z \\
  y & + & x & = z \\
  z & - & x & = y \\
  z & - & y & = x \\
 \end{array}
\end{eqnarray*}

コンピュータでは変数はメモリに格納される.メモリはアドレスという場所を持つ.言語がメモリというものを隠さないようなもの,たとえば C 言語や C++ 言語では,場所と変数の関係を抽象的に理解できるというのは必要なことである.彼女には既にその能力をかいま見ることができる.私は彼女に計算機言語を教えたいと思ったが,まずは足し算ができるようになってからだろう.

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