前回のような話を知人にすると,「そんなことわからなくても皆生きていけます」と言われることもあります.確かにその通りかもしれません.私も以前はわからない人が多数いてもいいんだと思っていました.しかしこのようなことを使って人を騙す人達がいることをみるにつれ,それでいいのかと思うようになりました.特にお金を騙し取る方法としてこれに類似した間違った論理を使った事件の記事などを見ると,知っておいて欲しいなと思うのです. 前回書いたことは実は数学の問題に見えますが,むしろ言葉の問題です.数学の問題の形になっていますがこの問題の言葉の問題の部分だけでも少し考えてもらえたら嬉しいと思います.つまりそれは問題が何を意味しているかということです. 問題は言葉で述べられていますから,言葉の意味を考えて欲しいのです.この場合にはゴールの率という考えと合わせるという言葉の意味を深く理解する必要があります.私はこの生徒に,このことを考えて欲しくてこの問題を考えました.ゴールの率というのはシュートした回数のうちの成功した回数でそんなに難しくありません.しかし,私は意外なことに「合わせる」の意味を理解していない人が多いことに気がついてこの問題を作ったのです.ここではいくらたしても値が同じというおかしな計算を正しいように見せるために,「合わせる」の持つ多重の意味を利用したのです. 私は「合わせる」という言葉が簡単なように見えるのに,実はそうでないことに気がつきました.言葉の持つ奥深さがあることに気がつきました.そして簡単に見えるが故にあまり深く考えないという盲点をついたのです.文学をする人など,一言一言の言葉の意味を大切にする人ならばこれには気がつくことでしょう.日常の生活ではあまり気がつかないことだと思います.しかし,これが見破られなければ,合わせても同じ量になることを利用して,たとえば税の負担やある料金の負担が変化しないように見せかけることができることでしょう.私は人々がそのようなことに騙されて欲しくありません.民主主義の世界では多数が嘘に騙されれば,私も騙されてしまいます.いや,たとえもし私がわかっていても多数に巻き込まれて騙されなくてはいけなくなるからです. この少年は問題の意味を理解して,私の嘘を見抜きました.そしてこの少年は私に尋ねました「先生も嘘を言うのですか?」私は答...