Skip to main content

兎のエゴンと私: 不便な頭脳

「もし1ヶ月が1学年だったら,私はもう25年生だよ」とその8歳の子は私に言った.「そうだね.1ヶ月が4週間としたら,そして1週間が1学年だったら,君は何年生?」 と私は尋ねた.でも,もう彼女はこの考えに興味を失なったみたいだった.

I: Egon 君は誰かを愛しているのかい?

Egon: 愛? それはどういう意味かな?

I: ... 説明は難しい.もし私が誰かを愛しているとしたら,私はその人を大事に思う.その人が大丈夫であることを願う.その人が幸せであることを願う.

Egon: それが愛ということなら,私は全てを愛しているね.

I: 私はある人を愛している.でも全ての人ではない.

Egon: どうして?

I: さて,どうしてか...もし私がある女性を愛していたら,私は彼女と一緒にいたい.でも全ての女性と一緒にいたいわけではない.

Egon: 君は誰かを愛している.どうしてその人と一緒にいたいのか?

I: なぜかはわからないが,もし私が誰かを愛していたら,その人と一緒にいたいと思う.

Egon: まあ,良い話だね.

I: どうなんだろう.実際は,私が好きな人は私のことが嫌いだったりする.何人かの女性が私に語ってくれたところでは,好きでもないのに好かれるのは気分の悪いものだそうだ.そして私はこれまで 2 人の女性に私に面と向かって気分が悪いと言われたことがある.

Egon の片方の耳は私の方を向いて聞いていたようだが,もう一方の耳は他を向 いていた.私との会話に飽きてきたのだろう.

I: こういう話がある.話の中ではある男はある女性に毎日花を贈っていた.彼は毎日彼女と少しの時間を過ごすのが楽しかった.でも,その女性はある病気でもう多分長くない.ある日,灰色の男がやってきて,男は彼に話をする.彼がいかに時間を無駄にしているのかを説明する.

Egon: ...

I: 私は彼が時間を無駄にしているとは思わないんだ.

Egon: 何かが無駄かどうかは個人の認識による.

I: 灰色の男は他の女性をみつける方が良いという.いつか彼は彼女を失なう.それは彼にとって苦しみとなるだろうと言う.

Egon: いつでも人は何かを失う可能性がある.長生きが良いとは限らない.

涼しい風が吹いた.太陽が優しく私を照らした.Egon は葉を食べていた.

I: 君は幸せなのかい, Egon?

Egon: 君の質問の意図がわからない.どうしてそう尋ねるのかね.

I: 私は幸せは重要なものだと思っていた.でも,今はどうなのかわからなくなった.幸せについて考えることで,私は不幸になっている気がする.

Egon: でも,考えを止めることができない.そうだろう?

I: できない.

Egon: 君もかつては 8 歳の子どもだったことがあるだろう.あの子は時々君が悲しそうだとと言っていた.

I: 私は自分が悲しそうかどうかわからない.でも,私は彼女の直感を尊重したほうがいいと思う.

Egon: 君は自分の心が何を言っているのか聞こえるようだ.でも,それに従うことはまた別のようだ.君の頭脳は不便なようだ.君は考えることができる.君は感じることができる.そしてそれが君を悲しくする.

不便な頭脳.多くができることは少なくしかできないことと同じ.私はより深く考えることができるのに,それが,私を悲しくする.私はより喜びを感じることができることで,それは同時に痛みを多く感じることにもなる.灰色の男はいわゆる「理性的な考え」ということも代表している.バーナード・ショーが理性的な人間について何か言っていた...

ところで,私の最初の問いの答えは 100 年生だ.私はたくさんのくだらない答えを知っているのに,1つも重要な答えを知らない,と君は言うだろうね,エゴン.

謝辞

学年というのは単なる数字にすぎないかもしれないことを教えてくれた I.M.R. に感謝します.

Comments

Popular posts from this blog

共有メモリによるプロセス間通信

Unix の共有メモリを使ったプロセス間通信について調べて実験をしてみた.対象は1つのホスト上での複数のプロセスである.ネット上でいくつか例題はないかと探したが,どうも良い例となるコードが見当たらなかった.結局はある解説記事と,Stack Overflow の議論と,man page を見て作ってみたものになったので,例をここに置くのも有用かと考え,この記事を書く.(もしかしたら探し方が悪くて良いコード例をみつけられなかっただけかもしれない.) mmap を使うかどうかという話がいくつもでていたが,POSIX の方向としては,shmem_open と mmap を使うという方向があるということだったので,それを信じてその形での実装を試してみた. 基本的なコードの流れは次のようになる. 共有メモリ領域を1つのプロセスが shm_open() を使って作成する.その際に,プロセス間で共通の文字列を識別子(``identifier'')とする.(Linux ではこれが /dev/shm/identifier のように見える.) 共有メモリ領域を mmap() でメモリにマップする.共有メモリポインター (shared_ptr)が得られる. shared_ptr を使って複数のプロセスで通信をする. 利用終了後は munmap() をつかってマップを消す. 共有メモリオブジェクトを shm_unlink() によって消す. 以下に示すプログラムは,server と client の2つのプロセスが共有メモリを使って通信をするものである.ここで,server プロセス数と client プロセス数は共に 1 を仮定する.server と client は自分の領域にしか値を書き込まないことで,ロックを避けている.互いに相手の値を読み,それよりも1大きい数を一定の期間ごとに自分の領域に書くという例題である.シンプルではあるが,共有メモリで通信をする基本としては十分なものだと思う.ソースコード(shmem_test.cpp)を以下に付加する.ソースコードのコメントにコンパイル方法とどのように利用するかを書いておく. /*   Shared memory inter process communication minimal exa...

複数の線を持つ線グラフを Jenkins の plot plugin で描く方法

私は毎夜のソフトウェアテストを自動化するために Jenkins というツールを使っています.今回は, valgrind  を使ってメモリーリークのテストを自動化することにし ました.その際,エラーの数の結果をグラフとして表そうと思って, Plot plugin  を使うことにしました. Plot plugin の例図からは,複数のデータラインを描くことができるのは明らかなのですが,どうやったらいいのかは参照のページや,例としてあった Perl script,plugin 中の help からは私にはよくわからなかったのです. ここで重要な考えは,それぞれのデータラインにはそれぞれの出力ファイルが必要ということでした.私はこれを誤解していました. 例として,ビルドの時に次の property データファイルを出力します.それぞれのファイルが1つのデータラインを表します. valgrind_trunk_result.definitely.property valgrind_trunk_result.indirectly.property valgrind_trunk_result.possibly.property それぞれのデータの中身は1行のデータ点です.たとえば, valgrind_trunk_result.definitely.property ファイルの中身は次のような1行 です. YVALUE=0 このファイルを ${WORKSPACE} ディレクトリ以下に出力します.ここで," WORKSPACE " は jenkins が提供する環境変数です. 図1が私の plot plugin の設定を示しています.これは jenkins の config 画面です.3つの data series があって,それぞれにデータファイルがあります. Figure 1: Plot plugin configuration in Jenkins 図2が結果です.複数の線が描かれているのがわかります.(実際には 3 本の線がありますが,最初の線と2番目の線が同じデータなので,重ねって見えません.) Fugure 2: Plot data with multiple data lines

マルコフ行列の中の著者達: どの著者がもっとも人々に影響を与えたのか? (8)

隣接行列 行列は数を二次元のます目上に並べたものである.これは数の表のように見える.ある規則で数を並べると,それがグラフを示すことと同じことになる.それを説明しよう.行列はグラフを表現するだけではなく,さらにいろいろなことができるのだが,ここでは特にグラフの表現をすることに集中して説明する.行列に関してもっと詳しく知りたい人には,文献 [1] をお勧めする. 行列について述べる動機はグラフを記述することにある.ここでいうグラフを表現する方法の一つとして隣接行列がある.ここでその定義を述べておこう. Definition of adjacency matrix:  n 個の点を持つグラフは \(n \times n\) の大きさの隣接行列で表現することができる.ここで,点\(i\) と点 \(j\) 間に有向辺がある場合,行列の成分 \(a_{i,j}\) を \(1\) とし,辺がない場合には \(0\) とする. これだけである.つまり隣接する点(= 辺で接続されている点)の要素を 1,そうでない要素を 0 とするような行列を隣接行列と呼ぶ. 例として人間関係のグラフを考え,好きか嫌いかの関係を隣接行列で示そう.好きという関係がある場合には点の間に辺を置くとここでは決める.嫌いな場合に辺を置くとしても良いが,私は嫌いな関係よりも好きな関係を知りたいので,今回は好きな関係とする.注意して欲しいのはこういう部分は私が勝手に決めることができるということである.これは事実とかではなくて,問題を解こうとしている人が矛盾が起きない限り,勝手に決めることができる.もし私が,「定義する」とか「仮定する」とか「と,考えてみよう」と言ったら,それは私が決めたことであって,読者には賛成してもらいたいと思っている.もし読者が賛成しない場合,その後の議論は意味をなさない. 次回は具体的なグラフと隣接行列の例としてアリスに登場してもらい,その人間関係を示そう. 参考文献 [1] Gilbert Strang, ``Introduction to Linear Algebra, 4th Edition'', Wellesley-Cambridge Press,  2009