Egon を見ているとなぜか心が休まる.そこにいて人参の葉を食べているだけなのだが,ついつい話しかけてしまう.本当は自分で自分と話をしているのだろうとは思うのだが,会話をしている気になるのだ.
I: 先日,友人にこう尋ねられた,「数学や物理学で見えない惑星を発見することは不思議ですね.魔法みたい.」と.
Egon: ...
I: 私には特に不思議でなかった.惑星が発見できることはとても素敵なことだと思うけれども,魔法ではない.
Egon: ...
Egon は興味のないことには答えない.今回も会話は無理かなと思ったが,そうではなかったようだ.
Egon: 不思議に思うこと.それは素敵だと思うな.
I: うーん,そうかな.重力の法則があって,それがあると思っていれば,惑星を発見できることは素敵だとは思うけれども,それ自体は不思議でも魔法でもない.
Egon: いやいや,不思議に思うことの素敵さのことさ.君も昔はいろいろなことが不思議だっただろう?
I: ...
Egon: 不思議に思う心をなくしてしまったとしたら,ちょっと考えたほうがいいんじゃないか.どうして昔は不思議なことがたくさんあったかということを.
I: どうして昔は不思議に思うことが沢山あったのか...今でも不思議に思うことはあるさ.昔と違うだけだと思う.
Egon: 本当にそうかな.不思議に思うということは,自分の世界にないものだからじゃないかな.
I: そして今私の世界は広がった.だから不思議に思うことは少なくなった?
Egon: それはどうかな.世界,あるいは宇宙はとても広い.君の世界がどこまで広いかわからないが,世界の半分まで広がったわけでもあるまい?
I: ...
Egon: 私はうさぎだからうさぎのことを何でもわかっている.と言ったらどう思う?
I: いや,君にも知らないうさぎのことがあると思うね.
Egon: 昨日くれたマッシュルーム,始めて食べたがとてもうまかった.新しい発見だったよ.世界にはいろんな食べ物があるのだろう.
I: すると,毎日が不思議に感じなくなったのは,私が自分の世界に満足して外を見なくなったから?
Egon: 君の友人は君みたいに科学や数学を職業にしている人ではないのだろう? そして子どもでもないのだろう.
I: そうだね.
Egon: その友人が「数学や物理学で見えない惑星を発見することは不思議ですね.魔法みたい.」と言った.素敵だと思うね.
I: 自分の世界を広げようとしない人は何も不思議にも思わない.私は自分の世界に満足して他の世界を見ることを忘れてしまった.ということかな.
Egon: そうかもしれない.
I: すると何を不思議に思うか.ちょっと考えてみることにするよ.
Egon: いい考えかもしれない.
Egon を見ていて,不思議に思った時のことを思い出そうとした.いろんなことが不思議で,周りにある知識が楽しかったことのことを思い出す.家には百科事典があった.あれは面白かった.世界の様々な気候とか,地球の中を図示したものもあった.地震がどうして起こるのか,プレートテクトニクスの説明,火山の分布がプレートの周りにあることを説明した図があった.どうやって地球の中の様子を調べるのかの方法が説明されていた.今思うと,私の両親は,たとえ内容をわからないまでも,いくつかの指標を私に与えてくれていたんだと思う.
それから私と Egon はしばらく無言だった.私は考えをめぐらしていたが,Egonが無言だったのは話すことがなかったからだろう.私は自分がいろんなことを知ったことで,傲慢になって不思議さがなくなったかどうかを考えた.そういう部分もあるかもしれない.でも,多分そうではない部分がある.不思議さは理解によって克服され,ほんの少しあたりまえの世界が広がる.しかしその先にはさらに不思議な世界が広がる.自分の中の世界を広げる.それが学ぶということなのだろうと思う.だから不思議さは素敵さとなる.それを Egon に説明しようと,私は口を開いた.
(次回へ続く)
I: 先日,友人にこう尋ねられた,「数学や物理学で見えない惑星を発見することは不思議ですね.魔法みたい.」と.
Egon: ...
I: 私には特に不思議でなかった.惑星が発見できることはとても素敵なことだと思うけれども,魔法ではない.
Egon: ...
Egon は興味のないことには答えない.今回も会話は無理かなと思ったが,そうではなかったようだ.
Egon: 不思議に思うこと.それは素敵だと思うな.
I: うーん,そうかな.重力の法則があって,それがあると思っていれば,惑星を発見できることは素敵だとは思うけれども,それ自体は不思議でも魔法でもない.
Egon: いやいや,不思議に思うことの素敵さのことさ.君も昔はいろいろなことが不思議だっただろう?
I: ...
Egon: 不思議に思う心をなくしてしまったとしたら,ちょっと考えたほうがいいんじゃないか.どうして昔は不思議なことがたくさんあったかということを.
I: どうして昔は不思議に思うことが沢山あったのか...今でも不思議に思うことはあるさ.昔と違うだけだと思う.
Egon: 本当にそうかな.不思議に思うということは,自分の世界にないものだからじゃないかな.
I: そして今私の世界は広がった.だから不思議に思うことは少なくなった?
Egon: それはどうかな.世界,あるいは宇宙はとても広い.君の世界がどこまで広いかわからないが,世界の半分まで広がったわけでもあるまい?
I: ...
Egon: 私はうさぎだからうさぎのことを何でもわかっている.と言ったらどう思う?
I: いや,君にも知らないうさぎのことがあると思うね.
Egon: 昨日くれたマッシュルーム,始めて食べたがとてもうまかった.新しい発見だったよ.世界にはいろんな食べ物があるのだろう.
I: すると,毎日が不思議に感じなくなったのは,私が自分の世界に満足して外を見なくなったから?
Egon: 君の友人は君みたいに科学や数学を職業にしている人ではないのだろう? そして子どもでもないのだろう.
I: そうだね.
Egon: その友人が「数学や物理学で見えない惑星を発見することは不思議ですね.魔法みたい.」と言った.素敵だと思うね.
I: 自分の世界を広げようとしない人は何も不思議にも思わない.私は自分の世界に満足して他の世界を見ることを忘れてしまった.ということかな.
Egon: そうかもしれない.
I: すると何を不思議に思うか.ちょっと考えてみることにするよ.
Egon: いい考えかもしれない.
Egon を見ていて,不思議に思った時のことを思い出そうとした.いろんなことが不思議で,周りにある知識が楽しかったことのことを思い出す.家には百科事典があった.あれは面白かった.世界の様々な気候とか,地球の中を図示したものもあった.地震がどうして起こるのか,プレートテクトニクスの説明,火山の分布がプレートの周りにあることを説明した図があった.どうやって地球の中の様子を調べるのかの方法が説明されていた.今思うと,私の両親は,たとえ内容をわからないまでも,いくつかの指標を私に与えてくれていたんだと思う.
それから私と Egon はしばらく無言だった.私は考えをめぐらしていたが,Egonが無言だったのは話すことがなかったからだろう.私は自分がいろんなことを知ったことで,傲慢になって不思議さがなくなったかどうかを考えた.そういう部分もあるかもしれない.でも,多分そうではない部分がある.不思議さは理解によって克服され,ほんの少しあたりまえの世界が広がる.しかしその先にはさらに不思議な世界が広がる.自分の中の世界を広げる.それが学ぶということなのだろうと思う.だから不思議さは素敵さとなる.それを Egon に説明しようと,私は口を開いた.
(次回へ続く)
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