Kilgore Trout ほど有名ではないが,売れないことに関してはおそらく同等の友人が書いた SF 小説にこんなものがある.ここに書かなければおそらく誰も知らないままであろうから,本人の許可を得て概要をここに記す.本のタイトルは「記憶漏れ」である.
この小説の主人公は,生まれかわりを研究している.その世界では生まれかわりと呼ばれているが,実際には記憶の共有であることがわかってきた.主人公は二人の過去の記憶を持つ人もいることを発見する.
ある日,主人公自身が,自分の娘と一部の記憶を共有していることに気がつく.つまり記憶の共有は過去の人間である必要はない.ある日,彼の妻と娘が宇宙飛行中に事故にあう.娘との最後の記憶の共有は彼に一つの仮説を与える.それは世界が現実の世界ではなく,仮想世界のシミュレーションであるというものである.悲しみの中,他人からは狂ってしまったと思われながら,彼は,この世界のシミュレーションに何らかのバグがあり,それが人の記憶のリークとして観測されるというものをつきとめ,それを利用して娘と妻をとり戻そうとする.仮想世界についてはいろいろな SF がある(魔法が使えるシミュレーション世界や,タイムマシンが使えるシミュレーション世界など)が,生まれかわりはシミュレータのバグであるというのは面白いと思った.
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