数学では番号だけ考えていれば良いが,実際にはこの番号は何かに対応している.何かとは区別さえできればなんでもよいのであるが,具体的な例を示した方がイメージがわくと思うので,2つほど例を示そう.
例1:点が著者を示す場合
以下の4人の著者を考える.- William Shakespeare
- Lewis Carroll
- Raymond Smullyan
- Martin Gardner
これらの著者がそれぞれどのような影響を受けたかは様々な見解があるだろうが,とりあえず,Shakespeare は Carroll に影響を与え,Carroll は Smullyan とGardner に影響を与えたとしよう.そのグラフは図 6のようになるだろう.
Figure 6. Graph example 1. Each node is an English author. |
例2:点が駅名を示す場合
点が駅名を示す場合を考える.- Weinmeisterstr
- Alexanderplatz
- Hackescher Markt
- Jannowitzbruecke
これらの駅間が隣あっている場合,それらの駅には関係があるものとして辺で接続しよう.するとそのグラフは図 7 のようになる.ところでBerlin の市内電車はよく工事をしていて,ある区間が不通であったり,困ったことに一方通行しかない場合があったりする.一方通行の場合には,グラフは有向グラフとなるであろう.
Figure 7. Graph example 2. Each node is a train station. |
ここで一つ注意して欲しい.点の例が何であっても,これらのグラフは同じ形をしている.同じ形をしているグラフは全て数学では同じであって区別しない.つまり,図 4, 5, 6, 7 (図4,5 は以前の blog を参照)は全て同じグラフである.数学ではこの形のグラフから何が言えるかということに関して考える.
著者と駅名が同じ形で示されたということは奇妙なことかもしれない.しかし数学は世界からパターンをみつけだし,それらに共通のことを考える学問である.そして私はいつも驚くのであるが,この世界には同じようなパターンが出現することがいくつもある.新しく出会ったパターンが何かに似ている場合,同じ問題が隠されているかもしれない.その時,初めて出会った新しい問題にもかかわらず,その問題を数学で解くことができることもあるのだ.もちろん,いつも解けるとは限らないし,似ているのに実際は違っていたということもある.最も基本的なパターンは数えられるものに共通するパターンである.人も犬も街も星も教会も数えられるということでは同じものである.だから足し算を一度習えば,どんな数えられるものも足すことができるのである.グラフは関係だけを示す数学のパターンである.点と辺だけをみていると味気ないかもしれないが,これが,Web page 間の関係,人間関係,街と街を継ぐ道路,電話を継ぐネットワーク,石油のパイプライン,などに共通してでてくるパターンである.
では,この関係をどうやって記述すれば良いのだろうか.記述することは重要である.特に同じものを同じものとして記述できれば「比較」ということが可能になる.2つのグラフが同じかというのはまたちょっと難しい問題だが,ここでは点は一意に並べられるものとする.その場合,同じ関係を記述したら同じものになれば比較ができる.次回はそのような方法を述べよう.
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