私が好きな YouTube Channel に「歴史雑記ヒストリカ」(https://www.youtube.com/@mond_historica) があります。ここでじゃがいもの歴史についてのビデオがあります。
【ゆっくり歴史解説】じゃがいもはどうやって食卓に浸透したのか?世界史の中のイモ史。
ここではマリーアントワネットやルイ 16 世がじゃがいもを広めようとしたことや,イギリス王家とじゃがいもの関係など興味深い話がありました。そこに,『じゃがいもは「聖書にない作物」で,したがって悪魔の植物であること。神の定めた男女の結びつき以外の方法で増えるじゃがいもは性的に不純であること。としてローマカトリック教会に告発され,裁判で異端とされてしまった。そして火あぶりの刑に処された。』という話があります。中世のローマ・カトリックは現在の基準では信じられない話があり,この話もそういうステレオタイプを生み出したものとして,面白いなと思いました。
それでこの話を友だちに話をしたいと思いました。ただ,私は今仕事の関係などでドイツに住んでおり,日本語のできる友人が限られます。それに聖書をかなり空んじているような友人もいます。そのため,1 つの YouTube Channel が言ったからといって簡単に紹介はできません。
そこで英語でこの話を検索したのですが,でてきません。例として,日本語で「じゃがいも 破門」で調べると多数のブログがヒットします。ただ,内容はほぼ同じです。おそらくどこからかコピーペーストされたのでしょう。また,どこからその話をもってきたのかの参照はみつかりません。
しかし英語で「potato excommunication (じゃがいも 破門)」では破門の意味とは何かとか,アイルランドでのじゃがいもの飢饉などの話だけです。他の検索例ですが,「potato trial guilty (じゃがいも 裁判 有罪)」ではじゃがいも保険で詐欺をした人の話や,じゃがいも関係の汚職の話などです。しばらく探しましたがでてきません。
英語での検索例: potato trial guilty (じゃがいも 裁判 有罪)
何人かの友人にも検索を頼んでみました。ドイツ語,ロシア語の検索でもみつかりませんでした。ただ,ルイ16世やマリーアントワネット,イギリス王室などの話はみつかります。また,ドイツでどうじゃがいもが広められたのかの話などは勉強になりました。しかし,裁判で有罪,火あぶりの話はないのです。
そこで「歴史雑記ヒストリカ」のモンドさんにコメントで,この話の出所はどこかとお伺いしたところ,丁寧にもこのエピソードの参考文献を教えて頂きました。それは
です。これは amazon でこのカテゴリーでベストセラーの本です。稲垣栄洋氏は静岡大学で農学の教授をされていらっしゃいます。https://tdb.shizuoka.ac.jp/rdb/public/Default2.aspx?id=11099&l=0
この本の第5章に:「西洋では聖書に書かれていない植物は悪魔のものである。そして,ジャガイモは「悪魔の植物」というレッテルを貼られてしまったのである。
中世ヨーロッパは,魔女裁判などが盛んにおこなわれた時代でもある。
そして,ついには悪魔の植物であるジャガイモも裁判にかけられてしまうのである。世の中の生物は雌雄によって子孫を残す。しかし,ジャガイモは種芋で繁殖する。これが性的に不純とされて,ジャガイモは有罪判決となってしまうのである。その刑罰は,驚くなかれ,「火あぶりの刑」である。」とあることをみつけました。
この本にはジャガイモのエピソードに関する参考文献もあります。そこでそれらしきものをあたってみましたが,残念ながら私の能力では火あぶりの話はみつけられませんでした。
そこで 2023-3-21 に研究者関係のネットワークで稲垣栄洋氏にコンタクトをとってみましたが,残念ながら現在 (2023-05-29) もご返事は頂いていません。spam などに入ってしまったのかもしれませんし,多数の著書をお持ちなのでいちいち対応はできないのかもしれません。
何人かの友人にも協力してもらい,探してみましたが,日本語以外ではでてこないこの話,もし一次資料をご存知の方いらっしゃいましたらぜひ御一報下さい。
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