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マルコフ行列の中の著者達: どの著者がもっとも人々に影響を与えたのか? (付録 A)


付録 A: Matrix とは何か


グラフを記述するのに matrix を使った.ところで matrix とはなんだろうか.簡単に言えば,matrix は数を並べた表である.

通常,いくつもの数を並べたものはやはりいくつもの数を並べたものである.たとえば,以下のようないくつかの都市の距離の表を考えてみる.

\begin{eqnarray*}
  \begin{array}{lrrr}
   & \mbox{東京}   &  \mbox{Berlin} &  \mbox{Auckland} \\
   \mbox{東京}     & 0     &    8940 &   8811    \\
   \mbox{Berlin}   & 8940  &       0 &  17742    \\
   \mbox{Auckland} & 8811  &   17742 &      0
  \end{array}
\end{eqnarray*}

マトリックス(matrix) は数をこのように行と列で並べた表である.日本語では「行列」という.しかし数学ではこの表を一つのかたまりとみる.時にこの表を,奇妙なことかもしれないが,一つの数のように扱うのである.一つの数のように扱うというのは,数と同様に matrix の間での演算があるということである.たとえば,matrix 間での足し算やかけ算というものを考える.それには数の 0 に相当する matrix や,数の 1 に相当する matrix が存在するということである.めんどうくさがりやの数学者は多数の数の間の関係をいちいち書くということに飽きて,ある数のまとまりの関係が一つの関係でおさまることを発見した.それを一つの対象 --- matrix --- として考えることで,様々な関係を簡潔に示すことができることを見い出したのである.

ここで matrix の用語を少し述べよう.matrix には「行」と「列」がある.matrix が 3 列,4 行の表である場合,\(3\times 4\) の matrix であるという.matrix を構成するそれぞれの数のことを matrix の「要素」という.各要素はこの行と列を使って指定することができる.二番目の列,三番目の行にある要素は,要素の添字を使って指定することができる.たとえば matrix \(A\) の 2列 3行目の要素は,\(a_{2,3}\) である.

先程示した距離の表(東京, Berlin, Auckland 間の距離)を matrix \(A_d\)として書くと以下のようになる.
\begin{eqnarray*}
 A_{d} =
 \left[
  \begin{array}{ccc}
   0     &    8940 &   8811    \\
   8940  &       0 &  17742    \\
   8811  &   17742 &      0
  \end{array}
  \right]
\end{eqnarray*}

ここで簡単な操作を例としてほどこしてみよう.次のようなベクトル \(v_{1}\)と \(v_{2}\) を考える.
\begin{eqnarray*}
 v_{1} = \left[
  \begin{array}{c}
   1\\
   0\\
   0
  \end{array}
  \right]
\end{eqnarray*}
\begin{eqnarray*}
 v_{2} = \left[
  \begin{array}{c}
   0\\
   1\\
   1
  \end{array}
  \right]
\end{eqnarray*}

このベクトル \(v_{1}\) と \(v_{2}\) はこの距離 matrix の例に関しては特定の意味を持っている.意味をふまえて,仮に,\(v_{1}\) を ``東京までベクトル'' そして,\(v_{2}\) ベクトルを ``東京までと Auckland までベクトル'' と呼ぶことにしよう.なぜなら,もし読者が \(A_{d} v_1\)というかけ算をご存知ならこれの意味がおわかりになるだろう.この計算の結果は,以下のようになる.
\begin{eqnarray*}
 A_{d} v_{1} =
  \left[
   \begin{array}{c}
    0    \\
    8940 \\
    8811
   \end{array}
  \right]
  \begin{array}{ll}
   \cdots \mbox{東京}     & \mbox{to 東京} \\
   \cdots \mbox{Berin}    & \mbox{to 東京} \\
   \cdots \mbox{Auckland} & \mbox{to 東京} \\
  \end{array}
\end{eqnarray*}
それぞれのベクトルの要素が「東京までの距離」を示している.東京から東京は動いていないので 0 である.次の例,\(A_{d} v_{2}\) は以下のようになる.
\begin{eqnarray*}
 A_{d} v_{2} =
  \left[
   \begin{array}{c}
    17751 \\
    17742 \\
    17742
   \end{array}
  \right]
  % \begin{array}{c}
  %  T \rightarrow Berlin + Tokyo \rightarrow Auckland \\
  %  B \rightarrow Belrin + Berlin   \rightarrow Auckland \\
  %  A \rightarrow Tokyo  + Auckland \rightarrow Auckland
  % \end{array}
\end{eqnarray*}
それぞれのベクトルの要素は以下の距離となる.
\begin{eqnarray*}
 \begin{array}{c}
  \mbox{東京} \rightarrow \mbox{Berlin} + \mbox{東京} \rightarrow \mbox{Auckland} \\
  \mbox{Berlin} \rightarrow \mbox{Belrin} + \mbox{Berlin}   \rightarrow \mbox{Auckland} \\
  \mbox{Auckland} \rightarrow \mbox{Berlin}  + \mbox{Auckland} \rightarrow \mbox{Auckland.}
 \end{array}
\end{eqnarray*}
同じ都市にいる場合,その距離は 0 であるから,この計算結果は以下のように簡単化できる.
\begin{eqnarray*}
 \begin{array}{l}
  \mbox{東京} \rightarrow \mbox{Berlin} + \mbox{東京} \rightarrow \mbox{Auckland} \\
  \mbox{Berlin}   \rightarrow \mbox{Auckland} \\
  \mbox{Auckland} \rightarrow \mbox{Berlin.}
 \end{array}
\end{eqnarray*}

読者はこれらの結果が正しくなることを確かめられるとよい.

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