Abstract
計算してみるとそのとおりだが直感に合わないことに出会うことがある.私の場合,特に確率論でそのようなことが多いが,幾何学でもそういう場合がある.今回はそのような例を示そう.Vector projection and directional cosine
図1 に問題を示す.これは私の友人の Dietger が私に尋ねた問題である.任意の単位ベクトル h が正規直交座標軸のある平面,ここではe1,e2面に投影された場合をh′とし,e1軸に投影された場合をh1とする.この時,cosα=|h′|cosϕ
を示せというものである.このcosα とcosϕ に h′の長さの比があるというのは私には直感的に奇妙に思えた.
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Figure 1. Two projections of an unit vector h. |
しかし,これは投影であるから,それぞれが cos の関係がある.まずは h1 は h の e1 軸への投影であるから
|h1|=h⋅e1=|h||e1|cosα=cosα
である.また,h′ のe1 軸への投影が h1であることに気がつけば,
h′⋅e1=|h′||e1|cosϕ=|h′|cosϕ
である.これは実は|h1| である.したがって,
cosα=|h′|cosϕ
である.
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Figure 2. The relationship among h, h′ and h1. |
つまり,h1 は hの直接の投影かあるいは投影の投影であることに気がつけば不思議はない.
ここまできたときに,私は方向余弦ということを思い出した.これを習ったのはずいぶん昔のことだが,なぜかこの方向余弦は私の頭の中でどの幾何学的なものとも結びついていない仲間外れのようなものであった.しかし,投影が平面への投影でなく,各軸への投影であると考えればそれは方向余弦である.これは単位ベクトルの各軸への投影にすぎないから,その二乗和は1である.なぜなら単位ベクトルの長さは 1 だからである.(あるいは,二乗和の平方根というほうが正確であるが.1 の平方根は 1 なので同じことである.)なんと単純なことだったのだろうか.方向余弦が単なるベクトルの成分を示していたものであったということに長年気がつかなったのも不思議なことである.
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