Skip to main content

ドイツにおける機会不均等(差別)の扱い (2)

第2節 機会不均等問題を扱う法的基礎

法的根拠は「ドイツ基本法 [1]」中にある.ドイツの法体系の中でこのドイツ基本法は憲法として働くものである.この法律については司法と消費者保護のための連邦省(Bundesministerium der Justiz und fürVerbraucherschutz)から公式な英語版も参照でき,本報告ではそれを引用する.また,日本語への翻訳は本レポートの報告者によるものであり正式なものではないことに留意して欲しい.

ドイツ基本法の第1条は「人間の尊厳 - 基本的人権 - 基本権利の法的拘束力」である:
  • 人間の尊厳は不可侵であるべき.これを尊敬し保護することは全ての国家権力の義務であるべき.
  • したがって,ドイツ国民は基本的人権が不可侵であり,奪われるものではないことが世界の全てにおける,コミュニティーの基本であり,平和の基本であり,正義であることを承認する.
  • 続く基本的人権は立法府,行政部,そして司法に直接適用可能な法として結びつけられる
ドイツの法律では,人々は人間の尊厳を犯してはならない.一方,表現の自由もドイツ基本法の第5条「表現,芸術,科学の自由」により認められている.

  • 全ての人は自由に表現する権利,公に意見を述べ,書き,描く権利を有すべきであり,障害なく自身を一般にアクセスできる情報源から知らせる権利を持つべきである.放送や映画などによる出版の自由と報道の自由は保証されるべきである.検閲はこれを行わない.
  • これらの権利は一般法の規定によりその制限が定められる.その規定とは幼い人達の保護や,個人の尊厳の権利などである.
  • 芸術,科学,研究,教えることは自由であるべき.教えることの自由は基本法への忠誠からいかなる人をも放すべきではない.
したがって,表現の自由は人間の尊厳の不可侵性に制限される.つまり,ドイツではヘイトスピーチは人々の尊厳を犯すが故に罪である.

ドイツ刑法典 [2] は 130条で民衆扇動罪(Volksverhetzung)を定めている.これは民主主義の否定やヘイトスピーチを禁じている.86条a では,刑法典では「基本法に沿わない組織のシンボルの利用(Verwenden von Kennzeichen verfassungswidriger Organisationen)」についての規定があり,ある種のシンボル,例えばナチスの記章など,についても規定がある.

「一般機会均等法 (Allgemeines Gleichstellungsgesetz) [3]」はあらゆる差別についての法律である.それは国籍,年齢,宗教,性,収入,障害,などによるものを含む.

差別はほとんどの場合に重罪として起訴される.重罪(felony) とは強盗,殺人,放火,強姦など,およそ罰金だけでは済まない罪のことである.しかしこれにはグレイゾーンがある.たとえば,ある種の芸術であるというような主張である.しかし,そのような場合には,それぞれのケースが裁判所で判断されることになるだろう.

  1. Bundesministerium der Justiz und für Verbraucherschutz,``Basic Law for the Federal Republic of Germany, English translation version,''  http://www.gesetze-im-internet.de/englisch_gg/englisch_gg.html, (Online; accessed 2015-4-2(Thu))
  2. Bundesministerium der Justiz und für Verbraucherschutz, ``German criminal code, English translation version'', http://www.gesetze-im-internet.de/englisch_stgb/englisch_stgb.html, (Online; accessed 2015-4-2(Thu)) 
  3. Bundesministerium der Justiz und für Verbraucherschutz, Allgemeines Gleichstellungsgesetz, http://www.gesetze-im-internet.de/agg/BJNR189710006.html, (Online; accessed 2015-4-2(Thu))

Comments

Popular posts from this blog

共有メモリによるプロセス間通信

Unix の共有メモリを使ったプロセス間通信について調べて実験をしてみた.対象は1つのホスト上での複数のプロセスである.ネット上でいくつか例題はないかと探したが,どうも良い例となるコードが見当たらなかった.結局はある解説記事と,Stack Overflow の議論と,man page を見て作ってみたものになったので,例をここに置くのも有用かと考え,この記事を書く.(もしかしたら探し方が悪くて良いコード例をみつけられなかっただけかもしれない.) mmap を使うかどうかという話がいくつもでていたが,POSIX の方向としては,shmem_open と mmap を使うという方向があるということだったので,それを信じてその形での実装を試してみた. 基本的なコードの流れは次のようになる. 共有メモリ領域を1つのプロセスが shm_open() を使って作成する.その際に,プロセス間で共通の文字列を識別子(``identifier'')とする.(Linux ではこれが /dev/shm/identifier のように見える.) 共有メモリ領域を mmap() でメモリにマップする.共有メモリポインター (shared_ptr)が得られる. shared_ptr を使って複数のプロセスで通信をする. 利用終了後は munmap() をつかってマップを消す. 共有メモリオブジェクトを shm_unlink() によって消す. 以下に示すプログラムは,server と client の2つのプロセスが共有メモリを使って通信をするものである.ここで,server プロセス数と client プロセス数は共に 1 を仮定する.server と client は自分の領域にしか値を書き込まないことで,ロックを避けている.互いに相手の値を読み,それよりも1大きい数を一定の期間ごとに自分の領域に書くという例題である.シンプルではあるが,共有メモリで通信をする基本としては十分なものだと思う.ソースコード(shmem_test.cpp)を以下に付加する.ソースコードのコメントにコンパイル方法とどのように利用するかを書いておく. /*   Shared memory inter process communication minimal exa

複数の線を持つ線グラフを Jenkins の plot plugin で描く方法

私は毎夜のソフトウェアテストを自動化するために Jenkins というツールを使っています.今回は, valgrind  を使ってメモリーリークのテストを自動化することにし ました.その際,エラーの数の結果をグラフとして表そうと思って, Plot plugin  を使うことにしました. Plot plugin の例図からは,複数のデータラインを描くことができるのは明らかなのですが,どうやったらいいのかは参照のページや,例としてあった Perl script,plugin 中の help からは私にはよくわからなかったのです. ここで重要な考えは,それぞれのデータラインにはそれぞれの出力ファイルが必要ということでした.私はこれを誤解していました. 例として,ビルドの時に次の property データファイルを出力します.それぞれのファイルが1つのデータラインを表します. valgrind_trunk_result.definitely.property valgrind_trunk_result.indirectly.property valgrind_trunk_result.possibly.property それぞれのデータの中身は1行のデータ点です.たとえば, valgrind_trunk_result.definitely.property ファイルの中身は次のような1行 です. YVALUE=0 このファイルを ${WORKSPACE} ディレクトリ以下に出力します.ここで," WORKSPACE " は jenkins が提供する環境変数です. 図1が私の plot plugin の設定を示しています.これは jenkins の config 画面です.3つの data series があって,それぞれにデータファイルがあります. Figure 1: Plot plugin configuration in Jenkins 図2が結果です.複数の線が描かれているのがわかります.(実際には 3 本の線がありますが,最初の線と2番目の線が同じデータなので,重ねって見えません.) Fugure 2: Plot data with multiple data lines

ソニーのカメラ (α 5000) の 30 分のビデオ録画時間の制限を外す方法

私は Sony の Alpha 5000 を気にいって使っています。しかし一つだけ問題がありました。それはビデオの録画時間の制限が 30 分というものです。 今日,ちょっと気になって探したらこの制限を解除できることがわかりました。以下のビデオがその紹介です。 https://youtu.be/7cstA_PuRIg このビデオの作者によれば,ほとんどのソニーのカメラのビデオの制限はなくせるそうです。ただし私が試したのは,Alpha 5000 のみです。 手順 カメラ側 スイッチ On Menu -- Setup --- USB connection を MTP にする スイッチ Off and On USB ケーブルでカメラをコンピュータに接続する (以下接続したままにする) コンピュータ側でソフトのダウンロードとインストール (私は Windows 10 で試しました) 次の URL に行く https://sony-pmca.appspot.com/apps ただし,Internet Explorer か Safari のみサポートということでした。Chrome では上手くいきませんでした。私が試したのは Windows 10,Internet Explore 11 です。 注意事項: このサイトは Sony のサイトですが,ここにあるソフトウェアは Sony のものとは限らないので保証はありません。御自分でリスクを判断してご利用下さい。当方も何も責任を負えません。 上記の URL から,OpenMemories のページに移動する。 このページにある PMCADownloader plugin (PMCADownloader.msi) をダウンロードする PMCADownloader をインストールする 私はいちどここでページを閉じてもう一度 https://sony-pmca.appspot.com/apps を開き,OpenMemories のページに移動しました ここで log に Loading plugin Plugin loaded と表示されます。PMCADownloader の Install がされていない時には,``Plugin loaded'&#